
中国ビジネスにおけるトラブル事例 (第001号) |
| ~非居住者に対する個人所得税と事務所課税問題~ |
日本の大手電機メーカーの北京駐在員事務所において、地方税務局と個人所得税に関するトラブルが発生した。
当該駐在員事務所は経費課税により企業所得税の課税計算をしている事務所で、日本の本社が負担しているスーパーバイジングの派遣者給与に対する中国での個人所得税課税、及び駐在員事務所の企業所得税と営業税の追徴課税を当局が求めてきたもの。
派遣者の中国での滞在は183日以内であり、派遣者給与を駐在員事務所が負担していないことは証憑で証明できるが、派遣者に対する給与は駐在員事務所の経費とみなし、企業所得税と営業税及び個人所得税を課すと主張する地税局と企業側で意見が相違、事務所側の対応のまずさもあり問題が拡大、収拾がつかない状況に陥ってしまった。
■ トラブルの原因分析
日本から社員を中国に派遣し、中国国内で市場調査や営業支援活動を行うケースはよく見受けられる。
中国でのこれら個人に対する所得税の課税は、居住者か非居住者かでその取扱いが異なり、更に居住者の判定が年間滞在日数183日越えと日中租税条約に定められているにも拘わらず、中国では90日を基準しているところにトラブルの要因が存在する。
また駐在員事務所は工商局の登記上、営業活動が出来ないため、日本からのス-パーバイジング派遣者を駐在員事務所に所属させず、中国で営業支援活動を行っているケースが多々ある。
このため、中国の税務当局は個人所得税の課税を強化し、これら疑いのある派遣社員に対しては課税とする取り扱いを行っている。
また、日本側の地税局に対する初期対応を誤ったことが、トラブル拡大の要因となっている。
■ トラブルの対応と解決策
非居住者の給与については中国国内で得た所得に対してのみ課税されるのが原則。したがって非居住者である日本からの派遣者に対する給与負担を、日本で行っている場合は非課税となるのが一般的だが、滞在日数が問題。
中国では90日(日中租税条約では183日)を基準としているため、90日を越えて滞在する場合は課税される可能性がある。
本件は、日本からの派遣者が駐在員事務所の営業活動を行っていると税務当局に疑われたのが発端だが、その後の事務所側の対応が日本的で、対決姿勢だったため話が拗れ、トラブルが拡大してしまった。
したがって当局に対しては、
(1)派遣者の行っている中国での業務は駐在員事務所と無関係であること。
(2)派遣者の滞在日数は183日を越えないこと。
(3)駐在員事務所の納税は適法に行っていること。
を説明し、また、人脈を介し当局の担当者と面談、儀礼を尽くし状況説明を行い、事なきを得た。
■ トラブル回避への対応
日本からの派遣者に対しては、年間滞在日数を90日以内とするのが無難。
90日を越えて滞在する者に対しては、183日を越えない範囲での事前承認を、税務局に対し行っておく。
また中国でトラブルが発生した場合に重要なのは初期対応、いち早く、適切に対応すれば被害は最小限で食い止められる。
「悪いことはしていないのだから、法的にとことん戦う」は中国では禁物。人脈社会の中国では「面子」が命、当局の担当者は面子をかけて対抗してくるため、真正面から争うことは得策ではない。
人脈を介し、相手の立場を尊重し、中国的なトラブル解決の方法で素早く終結させることが理想。
そのためには日頃からの中国での人脈作り、現地トラブルが起きた場合、即座に対応できる日本本社の危機管理の事前対策が必要。
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